2015年2月10日火曜日

山脇 直司 編『科学・技術と社会倫理 その統合的思考を探る』

東大退職後、統合学術国際研究所(http://tougou-gaku.jp)の所長を務められる山脇直司先生の所長就任後の成果が、東京大学出版会より刊行されました。

山脇 直司 編『科学・技術と社会倫理 その統合的思考を探る』
東京大学出版会 2015年1月29日刊行
ISBN978-4-13-001100-6
本体価格2,900円
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-001100-6.html


第一部はこの研究会の「統合」を目指す多様な第一線の研究者による討論も収録。第2部のドイツにおけるシンポジウムの発表論文、そして第3部の特論も、そ れぞれ興味深く。各論考、やや短くもう少し展開してほしいと思う部分もありますが、逆にコンパクトに論点がまとめられていて読みやすいものになっていま す。また第2部の「後期教養教育」という表現は、確かに専門課程に入る前の大学生が学ぶ教養教育との違い、この統合学の意義を論じるにあたっても重要かと は思いますが、わかりにくく、またなじみにくい表現であるように私には感じられました。とはいえ、各専門分野の第一線の方々によるこの研究所の研究会は実 に興味深いもので、その一端をうかがい知ることができる本書は、非常にお勧めです。

沢山引用したい箇所はありますが、あえて、一か所だけマインツァー氏の以下の部分がとくに印象的だったので。
「しかし、学際的研究は、上記に挙げたような国際社会のグローバリゼーションに関連する、文明や経済の諸問題から生じる新しい課題のみを扱うわけではな い。目を引くのは、物理学、化学、生物学という伝統的自然科学の基礎学問が、以前にも増して互いの知識に依拠しているということである。これらの基礎問題 は、方法論的、内容的に、多くの分野で一体となっている。」(202頁)

2014年10月26日日曜日

11/3(月・祝)第11回南原繁シンポジウム 「南原繁と平和――現代へのメッセージ」

開催があと1週間余りとなりました。皆様のご来場をお待ちいたしております。
http://nanbara.sakura.ne.jp/simposium2.html
第11回南原繁シンポジウム 「南原繁と平和――現代へのメッセージ」
日 時:2014年11月3日(月・文化の日)13:00 ~ 16:50 〔開場12:30〕
場 所:学士会館 202 号室
(東京都千代田区神田錦町3-28、神保町駅徒歩3分)

参加費:1,000 円 (申込み要)
主 催 : 南原繁研究会 (代表 加藤 節 成蹊大学名誉教授)
後 援 : 岩波書店、学士会、東京大学出版会、公共哲学ネットワーク 
協 賛 : 赤澤記念財団
【プログラム】
❖ 開会 13:00
 朗読 南原繁の文章から 元TBSアナウンサー 宇野淑子
 開会あいさつ 南原繁研究会代表・成蹊大学名誉教授 加藤 節
❖ 第1 部 講演(13:15 ~ 14:15)
 南原繁の平和思想
   ―その特質と今日的意義―
     国際基督教大学教授    千葉 眞
              休 憩
❖ 第2 部 パネル・ディスカッション(14:30 ~ 16:40)
「 南原繁と丸山眞男 ―平和をめぐって―」
◉コーディネーター 東京大学出版会 竹中英俊
▪南原政治哲学における平和論 ―地の国における平和の実現―
 千葉大学法政経学部非常勤講師 宮崎文彦
▪南原繁の「世界秩序」構想 ―戦前・戦中・戦後―
 成蹊大学非常勤講師 川口雄一
▪丸山眞男と「平和の条件」 ―戦後日本における「平和主義」再考―
 名古屋大学大学院研究生 大園 誠
▪南原・ニーバー・丸山 ―平和と正義と強制力との関係をめぐって―
 国際基督教大学研究員 柴田真希都
❖ 閉会あいさつ(16:40) 順天堂大学教授 樋野興夫
※ なおシンポジウム終了後、懇親会(17:00 ~ 18:30)を予定しております。
(定員100 名 会費2,000 円 自由参加・当日申し込み)

社会思想史学会

秋の学会シーズンですが、この週末は社会思想史学会。実は博士課程に進学し、最初に入った学会。そこにアイデンティティを求めているから、ではなく、学部 のとき、清水多吉先生のゼミ生だったからという理由だけですが。というような事情で、さほどまともに学会活動はしていませんが、今日は朝一のセッションか ら参加。午前最初は、カントの共和制論かテイラーかを迷って、前者の発表を聞いてから後者の質疑応答に。
次のセッションは門外漢だなあと思いつつ、明治官僚制のことを知りたかったので、「明治政府による官僚の発言に対する規制について」を聞く。思想家にして 官僚の神田孝平をご専門にされている関西学院・研究員の南森茂太会員の発表は、新聞紙条例・讒謗律の制定が、日本の近代官僚制を形成する契機となったとい う興味深い発表。素朴な疑問として、近代官僚制形成の契機となってた点は興味深いものの、一方で言論弾圧の契機ともなった負の側面もあるのではと質問。こ の制定に深く関与したとされる木戸孝允としては、ある程度の水準を高めようとする意図もあったのではというようなレスポンスをいただく。このあたりの歴史 には全く疎いが、自身でも取り組んでみたいと思う。
午後は田中秀夫編の『野蛮と啓蒙―経済思想史からの接近』の書評会。坂本達哉先生の評が聞きたくてということでもあったが、なによりもう95歳?!になら れた水田洋先生も交えて、中身の濃い議論に圧倒された。最後は上村忠男・宮﨑裕助氏の報告による「社会思想としての批評」のシンポジウム。期待通り、コメ ントの三島憲一先生のウィットにとんだコメントが興味深く。
いやはや、それにしてもそろそろ南原繁ででも題材に発表をしなくては。

2014年10月9日木曜日

グループ・ワーク:ジャーナリズムと政治

さて、先週は24名も集まった千葉大の政治哲学演習Ⅱですが、今週は2名減ったかと思いきや、前期受講で第1回には来られなかった2名が参加で結局は24 名に。グループ・ワークはやりやすくていいんですけれどね…。ということで、今回は先週の新聞記事読み分けをベースに、ジャーナリズムと政治:国家、世 論、デモクラシーをテーマに、グループでの討論と全体での共有。前回の読み分けは大変好評。「中立な報道」に対する疑問を意識づけできた点は、たいへん効 果あったという印象。世論操作ではという話題については、政権側の意向なのか、あるいは実は国民の側も望んでいるのではというような話も。大勢に影響され ることなく、疑問を持つところから自分なりに考えてみるという方向性は、昨年度からの受講生を中心に定着しつつある点をうれしく思っています。

2014年10月1日水曜日

政治哲学演習Ⅱが開講

本日より講義に先立って千葉大の政治哲学演習Ⅱが開講。例年通り後期は減るだろうと見込んでいたら、集まった学生は前期の約1/3が入れ替わり24名。演 習にしては相変わらず多い人数…。初回は何を扱おうか迷いつつ、高崎で連休明け頃にやっている定番の「新聞記事の読み分け」。ちょうど臨時国会が始まり安 倍首相の所信表明演説があったので、この話題を各紙がどう扱っているかを比較検討。扱ったのは読売、毎日、日経、産経、朝日の5紙。ちょっと面白かったの は産経で、短いながらも演説の内容をかなり網羅していてよいものの、地方創生に関して「故郷(ふるさと)を消滅させてはならない」という部分を引用してい るのがらしいかも。そしてリンク先の記事がまさにその通り、と思わせるのが読売。よくまとまっているし、文章も洗練されているが、都合の悪い部分は伝えな いようとしない。今回に限らず、この読み分けをするたびにますますこの傾向が強まっているように感じる。学生には、レポート執筆にしても、複数の情報源で 確認をとることの重要性を強調している。

2014年9月24日水曜日

9/23「新渡戸・南原と現代の教養」

昨日は学士会館において新渡戸・南原賞委員会による「新渡戸・南原と現代の教養」と題するシンポジウムのお手伝い。新渡戸・南原賞は一区切りとのことでのシンポジウム開催でしたが、なかでもやはり湊晶子先生の講演が圧巻…。
 御年82歳にして広島女学院大学の学長を今年度より務められておられるようですが、研究意欲も衰えるどころかますます勢いを増しているほどで、日本のキ リスト教女子教育を支えた「男たち」ということで、新渡戸と砂本貞吉(広島女学院創始者)を取り上げられた。新渡戸、砂本ともに湊先生が学長になられた際 には2代目の女性学長よりも扱いは相当に低かった点を憂慮され、変革に取り組まれた話も印象的でした。
 引用された言葉の中では、新渡戸が『婦人に勧めて』で記した「一個の人間として立派に出来上がった婦人(人格)ならば、妻としては良妻、母としては賢母 になる」として良妻賢母主義を批判した点が特に興味深く。湊先生ご自身が、まさに女性にもかかわらず/であるからこそ、ということではなく、一個の人間と しての確固とした人格をお持ちであるからこそ、あれほどの働きをなされるのであろうと。
 さて次は裏方ではなく、自身が学士会館にて南原繁シンポジウムを。
http://nanbara.sakura.ne.jp/simposium2.html

2014年8月12日火曜日

8/12 丸山眞男「政治的判断」

丸 山眞男を改めて読む機会があり、ああこんなものがあったっけと面白く読んだのが「政治的判断」(松本礼二編注『政治の世界』岩波文庫)。確認したところ丸 山眞男集の第7巻にも収録されていた。一般向けの講演記録なので、とても読みやすい。そして1958年に行われた講演であるからすでに50年以上も前のも のであるが「なぜか」まったくもって時代を感じさせないのはなぜだろう。外交とリアリズム、「政界」と「政治」、選挙における有権者の選択、政党の公約、 ジャーナリズム、2大政党制、「政界の安定」と「政治的安定」、政治的無関心、多数決など。どこか一か所ご紹介したいと思いつつ、どこかには決め難く。あ えて短く一節だけ。
「万事お上がやってくれるという考え方と、なあにだれがやったって政治は同じものだ、どうせインチキなんだ、という考え方は、実はうらはらなんです。」(370頁)
ちなみに丸山眞男が亡くなったのは、私が大学へ進学して間もなく。あまりにも取り上げられることが多いからか、あえて食わず嫌いを続け、学部生時代には全 く読まず。大学院進学後、福澤諭吉の『文明論の概略』を読む演習で、解釈が非常に丸山的であることを指摘され、それならば読んでみるかとようやく手にし、 ああ確かに…と気づいて以降、かなり集中的に読み漁るように。私の師は丸山の文章は元気が出るよね、と言っていたが、確かにその通り。批判的思考はほとん どストップしてしまうので(ほぼ全面的に同意してしまう…)あまり自身の論文に引用するなどはしませんが。