2009年10月27日火曜日

現実主義的理想主義者としての吉野作造

もう一つ吉野から。このような現実と理想の間でのバランス感覚こそが、政治学者としての面目躍如ではないかと。

(無政府主義のように:引用者注)無権力を理想とすると云う事は、我々の努力の主観的方針としては、不撓(ふとう)不屈の精神を以て理想実現の目標に突進することであるけれども、又事実の冷静なる客観的認識としては、凡そ理想なるものは無限の努力の上に初めて到達せらるゝと観念すべきもので、有限の時間内に於て実現せらるべきものではない。故に理想の実現の為に努力すると云う事は到底摑(つか)み得ざる或物を摑まんとして努力するようなものである。客観的に実現し得ざるものを、主観的に実現せんと熱求する所に、理想の理想たる面目がある。我国の政治家は多く物の観方が実際的に過ぎ、理想を追ふと云う事を馬鹿〱しい事のやうに思ふのを常とするから政界に本当の進歩がない。到底有限の時間内に実現し得ベからざるものとして理想に諦めをつけるのも間違だが、又他方に於て理想に憧憬するの余り近き将来に之を実現し得るものあるかの如くに観るのも亦誤りである。(選集21 295頁)

0 件のコメント:

コメントを投稿